1・満月の夜の邂逅

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一緒に暮らし初めた当初は愛情の裏返し、軽い嫉妬心からだと思っていた。 パシッと叩かれるだけだったし、それだけ好きだという事だろうと、嬉しかったから。 しかし、徐々に殴る力は増し、蹴りも出始めた。 服で隠れる二の腕や、お腹などに痣が浮かび上がる。 それでも私は愚かにも、エスカレートする暴力よりも、彼に嫌われる方が、孤独の方が怖かった。 とは言え、暴力に恐怖を抱かない程、愚かではない。 その都度抵抗を試みるも、更に拳が飛んできて、女の微力では為す術がなかった。 終いには同僚の男性と話すのにも露骨に嫌悪の視線を向けられ、少しでも笑みに近い表情をしようものなら、夕飯より先に帰宅早々、暴力が始まる。 誰にも相談出来ず、相談したとしても彼の人望は強固だった。 病院に行くのも怖かった。バレたらもっと殴られるのは火を見るより明らか。 優しかった彼の面影は塵ほどもない。 同僚と遊ぶのも禁じられ、許されたのは職場と家の往復だけ。 孤独から逃れた筈なのに、心は虚しさを募らせるばかり。 常に彼の態度、視線、挙動を窺い、息の詰まるような緊張感だけの同居生活。 逃げたいけど、逃げられない。 彼はそれこそどこまでも追いかけてくるだろう。 心身共にボロボロだった時、彼が急に会社に呼び出され、私は気晴らしに外出した。 そして本当に偶然同級生に再開して、カフェでほんの数分話をした。 もしかしたら尾けられていたか、用事を早く済ませたか分からない。 帰ると彼が居て、悟るより早く頬を叩かれた。 それまではどこかでセーブされていた暴力は、止めどなく私を襲った。 何度も何度も蹴り、殴られ、吐き出される罵詈雑言・・・。 游梨の意識はそこで途切れた。
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