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あたしはそう思うと、涙が溢れそうだった。でも今は必死に堪えて、あたしたちは取調室を出て行った。
彼の案内でエレベーターで7階まで上がると、ドアが開いた途端彼はエレベーターの外の左右を確認し、
「オッケー!おいで!!」
と彼は言って駆け出し、あたしもその後に続いた。エレベーターのちょうど真裏あたり。そこの非常口に出て、非常階段で一つ上の階、8階に上がると、あたしは彼の背中に問い掛けた。
「あのエレベーター、一番上の8階行きだったのに、なんでわざわざ階段で?」
あたしがそう尋ねると、彼は少し振り向いて、
「8階にあのまま上がったら、ドアが開いた途端ガードマンにつまみ出されるよ。この階段なら見つかりにくいし、相手の目をごまかせる。あのエレベーターはね、ちょっとしたセンサーが仕掛けられてるから、7階から上のボタンを押すと、セキュリティ強化されて、IDチェックされるんだ」
と言うと、あたしは納得して口笛を吹いた。
「すげぇ、セキュリティ。さすが!」
「いや、そこ、感心しなくても…」
彼はあたしの言葉に苦笑いしている。そうして8階の重そうなドアを少しだけ開けて、あたしと彼は廊下を見渡した。細いドアがちょうど真ん中あたりの壁にあり、彼は向こう側に見える体格の大きそうな背中を指差して、
「あれがここの守り神。かなり最強なガードマン。俺が今からまた向こうに回って、あいつと話してくるから、その隙に瑠生は会議室に走るんだ。合図をするまで動くんじゃないぞ。あいつがセキュリティ強化のスイッチを押したら、すぐに8階は閉鎖されるから」
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