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ヒロは匠の元に来る前…部屋で簡単な身支度をしていた。大きな荷物など必要ない。必要最低限で、必要なら現地で調達すれば良い。瑠生を助けたら、すぐに帰るんだから…。そう信じて…。
美貴は、そんなヒロの腕を掴んで引き止めている。
「あなたが行くことないわ。危険なんでしょう?どうして危険だって分かってて行くのよっ!」
美貴が怒鳴るようにそう言うと、ヒロは頭を横に振った。
「ごめん、美貴。俺さ、駄目なんだ。瑠生がいなきゃ、駄目なんだ」
「博之!?」
美貴は思わずヒロに抱き着いた。ヒロは驚きながらも、溜め息をついて美貴の腕を掴んで離した。
「美貴…。これがほんとの俺なんだ。往生際も悪いし、女々しいよ。誰かがいてくれなきゃ、こんなに駄目な弱い男なんだ…。こんな俺は君にふさわしくないんだよ」
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