5 復讐のLiberty

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哀れむような眼差しでヒロが言うと、美貴は涙が溢れてヒロを見つめた。 「あの子はあなたを愛していないわ!あなたと別れるって言ってたのよ。さよなら言わなきゃって、私にはっきりそう言ったわ。あなたにプロとしてチェロを弾いてほしいとも言ってた。だからあなたは行くことないのよ!」 美貴がそう言うと、ヒロは眉をひそめ美貴の肩を掴み、 「いつ……瑠生と話したんだ?」 と尋ねると、美貴はギクッとしてヒロを見つめた。 「瑠生さんがさらわれたっていう…あの晩よ。私、あの日あなたに会いにサンセットに行ったじゃない?あの後店を出たら、ちょうど瑠生さんが来たの。瑠生さんと話してみたかったから、あの辺りを歩きながら話してたのよ。肩の手術を受けてほしいって言ってたわ」 美貴がそう言って俯くと、ヒロは溜め息をついた。 「そうか。店の前で話し声が聞こえたのは、気のせいじゃなかったんだ」 とヒロは呟いて苦笑している。 「瑠生はもしかしたら、もう、気付いてしまったのかも。それでも、俺はこのまま逃げたくない」 「博之…?」 「美貴。美貴は、俺がもしチェロを弾かなくなっても、そばにいられる?」 突然のヒロの質問に、美貴は戸惑い、言葉が浮かばない。
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