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美貴さんなら、あたしができないことをヒロにしてあげられる。プロのチェロリストにしてあげられる。
でも、本当はそれだけじゃない。
ヒロを選べない最大の理由は……。あたしの中にある、全く別の感情。
そのことは、美貴さんに話さなかったけれど、サンセットの前で美貴さんを見送った後、……奴らに…襲われたんだ!あたしは思い出すと、ギリギリと歯を食いしばった。
すると、そこにドアがゆっくりと開いて、あたしは聞き耳を立ててドアの方を見上げた。
「目が覚めたのか。ここが何処だか、わかってるか?」
「わからないだろうな。お嬢ちゃんには」
男の声が2人。英語でクスクスと笑いながら話している。あたしは、眉をしかめただけ。金髪の男とスキンヘッドの男は、見覚えがある。
そうだ。
あたしを誘拐しようとして事務所に乗り込んできた二人組だ。すると、スキンヘッドの男があたしの体を乱暴に起こして、あたしの足を縛っていたロープを解いた。
「さぁ。ボスに会いに行くぞ。楽しみに…」
と男が背後で言いかけた時、あたしは手首を縛っていたロープを一瞬にして解き、背後にいる男に思い切り体当たりをした。
「ウワッ!!」
男は驚きながらよろめいているけれど、空腹のあたしの力では倒すまでは出来なかった。あたしは拳でそいつに殴り掛かると、金髪の男があたしを羽交い締めにした。
「油断するなと言ってたのはお前だぜ。情けないな」
と英語で金髪の男が言うと、スキンヘッド男はあたしを睨み付けた。
「まだそんな力が残ってたとはな!油断した。丸三日なんにも食べていないのに。しかも簡単にロープを解きやがって!」
と言って、床に落ちていたロープを拾った。
「離せッ!バカヤロウッッ!!」
もちろん、二人に分かるように英語で叫びながら暴れるあたしの腕を、ロープで手首を背中側に縛り、二人掛かりであたしを立ち上がらせた。あたしは二人を交互に睨み付けると、鼻息を荒くして仕方なく大人しく従った。
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