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柱の影に潜んでいたその男は、やがてゆっくりと前に歩き出し、手を叩きながらあたしの前に現れた。
その男は、怪しげな笑みで手を叩き、姿勢もよくそこに立っていた。
真っ白のワイシャツに紺色のダブルスーツ。黒のドット柄のネクタイを、襟元まできっちり結んでいる。靴は磨き上げられた艶やかな革。黒髪はオールバックで、浅黒い肌をしている。目は大きくて彫りが深い。ヨーロッパの人か…?歳は、匠と変わらないか、匠より少し若いのかもしれない。
あたしはそんなことを思いながら、彼を見上げた。彼は微笑みながらあたしに歩み寄ると、
「噂には聞いていたが、たいした腕前だ。女にしとくのは勿体ない」
と、太く低い声は、そう英語で言った。
「あんたが……………カルテロ?」
「いかにも」
「よくも美衣をあんな目に………!許せない。あたしがあんたを殺してやる!ダディもママもあんたの父親のせいで死んだのよ!」
あたしが涙ぐみながらそう言うと、カルテロはまだ笑顔を崩さずに、あたしをじっと見つめていた。
「ずっと、会いたかったよ。ルー・ディズリー」
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