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年が明けて、瑠生と匠は日本に帰国した。
空港に系斗が見送りに来て、別れ間際系斗は匠に小さな声で、
「前に話した私の昔愛した人は、本当は私を庇って撃たれて、命を落としたのです。あなたと瑠生がそうならなくて良かった。瑠生の強さが羨ましいです」
と言うと、匠はそんな系斗の肩を掴んで微かに笑みを浮かべた。
「サンキュー」
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あたしは帰国したその足で、美衣の入院する病院に向かった。匠は事務所に行くと言って、別行動になった。
美衣はすっかりよくなって、個室から6人の大部屋に移されていた。顔色もすっかり良くなった美衣を見て、あたしはたまらなく嬉しくて笑って美衣を抱きしめた。
「良かった。ほんとに良かった」
あたしはそう言って涙ぐむと、美衣も涙が溢れてきてあたしの背中に腕を回して抱きしめた。
「瑠生も…。無事でよかった。大変だったんでしょう?こうして元気に会えて良かった」
美衣の言葉に、あたしは体を少し離して美衣を見つめると、
「知ってるの?」
と聞くと、美衣は小さく頷いた。
「ヒロさんからね。あれからも時々来てくれて…聞いた。匠と瑠生のことも」
「美衣…あたし」
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