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「ほんとは、御礼じゃなくて、さよならを言いに来たんでしょう?」
「遥…」
「私、分かってたの。あなたが瑠生を愛していること。気付かないフリをするなら、…もしほんとに気付かないのなら、それでもいいからそばにいようと思ったわ。だけど、いつの間にか二人とも気付いてしまった。多分、同時に。そうなったら、もう二人を止められなかった。完敗よ。匠が瑠生を思う気持ちにも、瑠生が匠を思う気持ちにも、勝てなかった。あなたたちを、侮ってたわ」
遥はそう言って涙ぐんで微笑んでいた。
「あなたがこうして帰ってこれたのも、瑠生のお陰なのよね。でも、こんなイイ女を逃して、後で後悔しても遅いんだから!」
涙を隠そうとして遥は背を向けると、俺はそんな遥を背中から優しく抱きしめた。
「お前はイイ女だよ。今までありがとう。アメリカまで付き合ってくれて、ありがとう。感謝しても、しきれないほど………」
俺は心からそう言うと、遥は驚きながらも、静かに目を閉じて泣いていた。
さよなら……。
私の愛した人。
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