episode それは、楽園で始まる…

6/14
前へ
/276ページ
次へ
あたしは頭を横に振ってそう言うと、ヒロは悲しそうにあたしを見て、 「じゃ、俺を選べるか?瑠生」 と言うと、あたしは目を丸くした。ヒロはあたしを真顔で見つめている。あたしは返事に戸惑って、言葉が思い浮かばない。すると、ヒロは苦笑してあたしの頭を軽く小突くと、 「困るなら、我が儘言うなよ。ばか」 と言った。ヒロはまだ少し残っている荷物を、再び整理し始めた。 「分かってるから…。もう、充分すぎるくらい、分かったからさ。瑠生と匠さんのことは。俺の中でも、とっくに気持ちの整理はついてる」 「ヒロ…」 あたしは涙が溢れてきて、そんなヒロの背中を見つめていた。
/276ページ

最初のコメントを投稿しよう!

578人が本棚に入れています
本棚に追加