1 陰謀のプロローグ

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文字は、英文で書きなぐられている。 {我々の探し物を見つけた。アメリカから舞い降りたその呪わしき鷹は、日本で羽根を休めている。復讐はゆっくりと始まるだろう} 幼少時代アメリカに住んでいたし、そもそもアメリカ人と日本人のハーフなので、英文は読める。あたしは何故か、妙な胸騒ぎがしてならなかった。 呪わしき鷹…。それってもしかして、匠のこと? * 俺(匠)は依頼人の自宅にいた。 東京都内の麻布のマンションに、萩原玲子は夫と二人暮しだ。だが、その夫が突然失踪した。原因も分からないし、女の影も借金もないという。妻の玲子は長いストレートの髪に、しなやかな細身で、細い伏せ目がちな瞳をしている。俺は、玲子の前にテーブルを挟んで座り、溜め息をついていた。 「今日、会社のほうに聞き込みにいきます。奥さんも何か分かったら、すぐに連絡してください」 俺がそう言うと、彼女は涙ぐんで頷き、 「よろしくお願いします…!」 と小さく頭を下げた。この依頼には、最初多少の疑問点があった。が、萩原玲子が美人だったので、ちょっと話を聞いてみようと思うようになっただけだ。とはいえ、話すたびに萩原玲子に何か違和感を感じていた。 * あたしと恋人のヒロは、山下にあるジャズバー、サンセットに来ていた。 さっき、今日のセッションが終わったばかりだ。
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