1 陰謀のプロローグ

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同じバンドのメンバーのアキとモウリは先に帰ってしまった。あたしとヒロはカウンターで飲んでいた。ヒロは、短い髪に片耳にピアスをしていて、長身。沖縄生まれだから、かなり小麦色の肌をしている。 「ヒロのバースデー、もうすぐだよね。何しようかな」 と、あたしはにこにこ笑いながら頬杖をついて言うと、ヒロは苦笑してウォッカトニックを飲んでいる。 「まだ一ヶ月以上先だよ。たいしたことしなくていいって」 とヒロが優しく言うと、あたしは頭を横に振って、 「なんかしたいの。こないだのあたしのバースデーだって、コンチネンタルホテルでやってくれたじゃない?あれにはびっくりした。すっごく感動したわ!だからあたしも、何かしたいの。させて~~~!!」 とヒロの腕を掴んで口を尖らせて言うと、ヒロは声を上げて笑って頷き、 「分かったよ。楽しみにしてるよ」 と言うと、あたしはまた笑って頷いて、あたしたちは軽くキスをしてから、グラスを合わせお酒をグイッと飲んだ。 そこに入口のドアが開いて、若い女性一人と男性が二人、入って来た。レジにいたマスターのアメリカ人ケビンが、顔を上げて三人を見るとにっこりと微笑み、 「いらっしゃいませ。三名様デスカ?」 と尋ねると、先頭にいた女性が店内を見渡した。 「生演奏が、聴けるって聞いてきたんだけど」
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