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彼女が尋ねると、ケビンは申し訳なさそうに眉を八の字にして、小さく頭を下げた。
「申し訳ありません。さっき終わってしまったんですよ…」
ケビンが言うと、三人は顔を見合わせて溜め息をついていた。
あたしはヒロと同時に立ち上がり、帰ろうとして出口に向かうと、ヒロはケビンと話している女性を見て見覚えがあって思わず驚き、立ち止まってしまった。
「……美貴!?」
「え?…博之?!」
その女性の後ろにいた男性二人も、驚いてヒロに歩み寄り、
「博之!お前、やっぱりジャズのとこにいたのか!」
「演奏してるのか?探したんだぞ!!」
と嬉しそうにヒロの腕を掴むと、ヒロは複雑な表情でその女性、美貴を見つめた。美貴は涙ぐみながら、なんだか嬉しそうに微笑んでいた。
*
大河内美貴。
ジャズピアニスト。
パーマが緩くかかっていてショートボブ、パールの垂れたピアスをしている。芯が強そうな瞳、ワイン色の口紅がよく似合う。
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