577人が本棚に入れています
本棚に追加
あたしが尋ねると、匠は首を傾げて、
「まぁ、遥も、関わっているけど」
と言って苦笑している。そうして匠が玄関に行き革靴を履くと、あたしも後に続いてロングブーツに足を入れてブーツのファスナーをあげた。匠が先にドアを開けて外に出ると、その冷たい風に、あたしは一瞬目を細めた。そして、ゆっくりと顔をあげて匠の横顔を見つめると、何故だかあたしはドキッとした。
匠はそんなあたしに気がついて、
「なんだ?」
と言うと、あたしは頭を横に振って微笑んで、
「ううん…」
と言うと、あたしたちは歩き始めた。匠が前を歩き、あたしがその後ろをついていくようにトコトコと歩いていく。そしてエレベーターに乗り込み、エントランスに向かっていた。あたしは匠の背中を見つめながら、ふと思った。
どうして、この人はあたしを抱いたんだろう。でもそんなことを匠に聞けるわけがない。そして同時に自分にも問い掛けてみた。
どうしてあたしは、ボスと寝たんだろう。
そう考えてみると、自分でも答えが出せない。すると、匠が向こうをむいたまま、
「瑠生」
と言うと、あたしは顔を上げた。
「夕べのこと、後悔しているなら、忘れろ」
最初のコメントを投稿しよう!