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やがて、ドアがノックされて遥さんは颯爽と歩いていきドアを開けると、
「すでに匠と瑠生はお待ちかねです」
と誰かと話している。匠とあたしはソファに座っていたけれど、同時に立ち上がった。
ドアの向こうからゆっくりと現れたのは、女性。
見たことのある、顔。
白いシャツにグレイのタイトスカート。黒いパンプス。長い髪は後ろで一つに束ねている。その女性は遥さんと共に、匠とあたしに歩み寄ると、あたしは驚いて目を丸くした。
「…嘘…!」
あたしは身を乗り出して、
「ママ…!!?」
と言って、思わず彼女に駆け寄り思い切り飛び付いた。
あんなに憧れて、会いたくて……、失ったことが恐くて、悲しかった。
あんなに愛していた母が、目の前にいる。
相変わらずの、優しい笑顔を浮かべて…。
*
「ママ…!!ママ!!」
あたしは彼女を抱きしめながら、涙が溢れてきた。すると、彼女は溜め息をついてあたしの肩を軽く叩くと、
「残念だけど、瑠生。私はあなたの母の鈴音ではないの」
と彼女が言うと、あたしは目を丸くして、彼女からゆっくりと離れて彼女を見上げた。すると、匠が後ろからあたしの肩を掴み、
「本当だ、瑠生。彼女は藤川香織さん。鈴音の妹なんだ」
と言うと、あたしは驚いてもう一度その女性を見つめた。
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