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「我々は、あの組織に関わりたくない。でも、上部の方で意見が分かれてる。やるなら、逮捕ではなく壊滅。もしくは、カルテロが匠さんに接触するのなら匠さんを日本から追放。でも、匠さんが手伝ってくれるなら、私は全面的に協力するわ。実力者の味方もつけてあげられる。ねえ、匠さん。カルテロに対抗できるのは、あなたしかいないのよ」
香織さんの言葉は、あたしを硬直させた。あたしは唇を噛み締めて、何だか動けなくなり、涙が溢れそうだった。すると匠は立ち上がり、隣に座るあたしの腕を掴んで立ち上がらせると、あたしはハッとして匠を見た。香織さんと遥さんも、そんな匠を見つめていた。
「帰ろう。今すぐ答えは出ない…。俺は、もう闘う気はない」
と匠が言うと、匠はあたしの腕を引っ張って応接室を出ていこうとすると、遥さんは思わず立ち上がった。
「匠!!私は…どんな時も、あなたの味方でいるわ!忘れないで…」
と言うと、匠はゆっくり振り向いて遥さんを見ると、静かに微笑み、あたしと部屋を出て行った。
遥は涙が溢れてまた座り込むと、香織は優しく遥を抱き寄せた。
「馬鹿ね…。彼を本気で愛したら、駄目だって言ったでしょ?私と匠さんを繋ぐ橋渡し役だったはずよ」
「わかってます。でも……」
遥はそう言って俯き、泣き続けていた。
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