4 約束

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* 初めて匠と遥が会った時。 横須賀の米軍基地で、匠は武器売人と揉めて撃たれて倒れていた。 遥は動物以外でも、普通の外科医としての資格もあったので、基地内の医療室で匠の傷の手当をしていた。銃弾の傷のため、病院には行けない。ここでもし警察から政府、国家に知られたら、アメリカに強制送還される。いや、強制送還先がアメリカとは限らない。血が止まるのを待つしかないと思っていたところで、遙と出会ったのだ。遥は基地での治療後、傷だらけの匠と出会い、使っていない部屋で治療した後、匠はすぐに姿を消した。その後、公安警察の香織が匠と接触するにあたり、情報通信局にも籍を置く遥が橋渡しとなり、匠と再会した。 それから、匠と遥は会うようになっていったのだ。 * あたしと匠は、匠の部屋に帰ってきていた。 あたしは横須賀から、ずっと無口で一言も喋らなかった。すると、匠はそんなあたしの頭を優しく撫でて振り向かせた。 「お前がそんな、気にすることはない。これは俺の問題だ。瑠生を巻き込むつもりはない。美衣を無事に退院させてやりたいし、あんな組織を追うつもりはない」 匠が穏やかにそう言うと、両足を揃えて膝を抱えていたあたしは、顔を上げて匠を見つめた。 「もし……あたしがあの時みたいに、美衣の仇を討ってって頼んだら、どうする?やっぱり、仇を討ってくれるの?」 あたしはそう真剣に尋ねると、匠は微笑んであたしを見つめた。 「瑠生が望むなら…」
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