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ヒロ。
状況が変わったよ。
あたし、あなたのそばにいられない。
あたし、匠と寝たの。
なんで?って聞かないでね。あたしだって、分からないから。
だから、あたしを許さないで。
夢を、諦めたりしないで…。
あたしはそう思うと、涙が溢れてきた。でも、必死に我慢して唇を噛み締めると、深く深呼吸をしてサンセットのドアに触れようと腕を伸ばした。
そこに突然、あたしの後ろの車道に黒い車が勢いよく止まり、中から二人の男……以前あたしを誘拐しようとしたあの二人の外国人男が飛び出してきた。
「え?」
あたしは驚きながら男たちを見ると、男はあたしの首に何か針を刺して、あたしは抵抗する間もなく、すぐに失神し、男たちに抱えられ車に押し込まれてしまった。
*
「瑠生…?」
ヒロは瑠生の声を聞いたような気がして、カウンターから振り向いた。だが、そこに瑠生はいない。ゆっくりと歩いてカウンターを出て、サンセットのドアを開けて辺りを見回してみた。
遠くの信号で、黒っぽいワゴン車が勢いよく曲がる瞬間を見た。車はあっという間に見えなくなり、ふとヒロは足元に瑠生のショルダーバッグを見つけると、咄嗟にショルダーバッグを拾い上げて、眉をひそめた。
「瑠生?!」
ヒロはそう呟くと、ひどく胸騒ぎがした。
嫌な予感。
不吉な予感。
これは、危険信号…!
まさか……瑠生が、さらわれた!?
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