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「……あいつらの目的は俺だ。向こうから連絡がまだ来てもいないのに、瑠生に何かするってことはないだろう」
と冷静に言うと、ヒロは眉をひそめて俺を睨みつけた。
「そうだよな。匠さんがついてる。瑠生も、匠さんを信用してるもんな。でも、俺は何も出来ないけど、俺だって心配なんだ。俺に何ができますか?匠さん。俺にできることは何ですか!?」
ヒロの真剣な嘆きに、俺はヒロを見つめた。
「信じていろ。瑠生の無事を祈るしかない。俺だって今は何もできない。だが、このままではすませない。必ず瑠生を助ける…!」
俺の冷静な言葉の内面に、激しい怒りを隠していたが、ヒロはその怒りに恐らく気付いたかもしれない。そこに、俺の携帯電話が鳴った。相手は香織さんだった。
「ついさきほど、貨物の飛行機にカルテロの傘下の小さな子会社の荷物が幾つか運び出されたわ。こんな時間に…。もしかしたら、瑠生はその中にいるかもしれない」
香織さんがそう言うと、俺は息を飲んだ。
「その貨物は…どこ行きですか?まさか…」
頼む。日本であってくれ。
俺は、そう願って胸が押し潰されそうだ。
「アメリカ。ニューヨークよ」
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