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「何言ってるんだ、遥。これがどんなに危険な…」
と俺が言いかけると、遥は頭を大きく振って、
「問題は、ただ、匠が日本からうまく出られるか。また、アメリカ側は匠を受け入れてくれるか。今、公安やアメリカのCIAの上部で揉めてるのよ。香織さんが掛け合ってくれてるけど、状況はかなり厳しいわね」
遥がそう言うと、俺は舌打ちしながら頭を抱えて、俯いてしまった。ヒロはそんな俺を見つめて、何も口を出せなかった。
それもそうだろう。
遥の口から出たCIAや公安…という名称が、まるで架空の世界のようで、実感など湧かないだろう。ドラマや映画でしか聞いたことのない組織が、まさか自分に降りかかってくるなんて。
そう。それが、普通の人の反応だ。
*
エスティマのカーナビを操作して、俺は瑠生の服についている発信機を操作した。だが反応はなく、おそらく敵に気付かれて外されたのだと思うと、思わずハンドルを叩いて顔を埋めた。
待ってろ、瑠生。
頼むから大人しく待っててくれ。俺が必ず助けに行くから……。
……瑠生。すまない。俺がついていながら油断してた。すまない…瑠生!もう、これ以上誰も失いたくない。
スティーブたちの二の舞はさせないから…!
*
翌朝。
俺は遥と金沢八景にやってきた。
香織さんは秘密の事務所にいる。
いろいろと狙われることが多いので、今は八景島のレジャーランド内にある水族館にオフィスを隠していた。
香織さんは、訪れた俺と遥を見て溜め息をついた。
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