藤色瞳の一条さん

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「まぁ」 無言の一条さんに向かって言った。 「俺はそんなことしないけど」 「…」 「好きでも付き合ってないのなら」 とても、そっけない言い方だったと思う。 まるで一条さんと長岡の付き合い方を否定するような、そんな言い方。 「聞いててそう思った。俺には関係無いから口出しする権利なんてないけどね」 「…分かってるよ。亜美ちゃんからも同じことを言われたの」 「へぇ、そうなんだ」 確かに、内田はそういうことを言いそうだ。 イメージが瞬時に浮かぶ。 いつも一条さんのことを一番冷静な目で見つめているのは、彼女かもしれない。 「だから、冷泉君の言ってることは正しいよ」 見つめた彼女の瞳は仄かに薄い紫のかかった色をしていた。 その瞳も今自分を見つめている。 「今日は、ありがとう。冷泉君」 「いや、俺が勝手に引っ張ってきたようなもんだし」 「ううん。それじゃあ私、そろそろ保健室戻ろうかな…」 …え? 今日は一日ここへいて、校門まで一緒に帰ると思っていたのは自分だけ? そう言うと、一条さんは腰を上げた。 彼女は紛れもなく帰ろうとしていた。 俺を置いて。
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