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「係が終わったら、また来させてもらうね」
小さく手を振って、一条さんは音楽室を出て行った。
パタン。
ドアの閉まる音が静かになった室内に響く。
どうしてだろう。
あと二週間もすればまた彼女はここへ戻ってくるだろうに。
その二週間は俺にとって大きい物に感じてしまう。
何があるのか分からない。
長岡は一条さんのことが好きだから。
もしかしたら、既に告白もしているかもしれないし。
そして、彼女の気持ちの揺れもいつどのように変わるか分からない。
好きになられたら、その時はお終いだ。
それが分かっていても長岡のようにアプローチが出来ない自分。
ただの意気地なしとしか言えない。
口には出さない小さなヤキモチの連発。
…何か。怖い。
そう思う自分がいた。
開けていた窓の傍に寄る。
運動場の真ん中ではサッカー部が活動している。
その中に、ボールを追いかける清水の姿を見つけた。
しかし、そのメンバーの中に長岡はいない。
長岡は今どんな気持ちなんだろう。
きっとあいつも一条さんが戻ってくるなんて思っていないと思う。
嬉しいだろうな。
うん、きっとすごく嬉しいはず。
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