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~一条瞳子(イチジョウトウコ)~
高校一年生。
とある秋の日、私はこれまでにないほど動揺していた。
放課後、誰も残らぬ教室。
「ごめんなさい…」
深々と頭を下げた。
生まれて始めての告白だった。
どう言っていいのか分からずにしどろもどろしていると、その男子生徒は淡々とこう言った。
「分かった」
そう言うとすぐに身を翻して教室を去っていったのである。
その人がいなくなったのに、私の心臓は未だバクバクと音を立てていた。
告白って、する方もされる方もこんなに緊張するんだ…
こんなにも、胸が痛くなるものなんだ…
恋愛経験のない自分にも呆れる。
もうちょっと柔らかい言い方もあるだろうに、ごめんなさいの一言しか言えなかったなんて。
ヘナヘナと床に腰を下ろして胸に手を当てた。
隣のクラスの男子だと思う。
会話をした記憶はない。
…どんな人だったんだろう。
私より頭一つ分背の高いその男子生徒は、終始静かな表情をしていた。
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