こわれもの

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
檻の中に入ったあいつを、 自分のものにしたいと思った。 力ずくで奪えば、 檻の鍵は容易く手に入った。 おれはあいつの手を引いて、 檻から出して連れて帰った。 そうしてあいつはおれのものになった。 おれの部屋の隅っこで、 林檎の数をかぞえている。 なにも知らない、曇りのない目で、 首をかしげておれを見る。 あいつはおれのだ。 おれは誰にも捕らわれない。 おれは何にも従わない。 なのにどうして触れられないのだろう。 おれの自由にできるはずなのに。 なのにどうして抱けないのだろう。 あいつをどんなものより気に入ったのに。 押さえつけるのが怖くて、 手を握ったらあいつは笑った。 しばらくは、 このままでいいと思った。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!