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檻の中に入ったあいつを、
自分のものにしたいと思った。
力ずくで奪えば、
檻の鍵は容易く手に入った。
おれはあいつの手を引いて、
檻から出して連れて帰った。
そうしてあいつはおれのものになった。
おれの部屋の隅っこで、
林檎の数をかぞえている。
なにも知らない、曇りのない目で、
首をかしげておれを見る。
あいつはおれのだ。
おれは誰にも捕らわれない。
おれは何にも従わない。
なのにどうして触れられないのだろう。
おれの自由にできるはずなのに。
なのにどうして抱けないのだろう。
あいつをどんなものより気に入ったのに。
押さえつけるのが怖くて、
手を握ったらあいつは笑った。
しばらくは、
このままでいいと思った。
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