Case.8 -Restart-2

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「大丈夫ですか?」 強面な男と花屋が振向く。 まだ中学生くらいの少年が、立っていた。 白いハンカチを差し出しながら。 ハンカチを見るやいなや、強面な男は「はっ!」と着用している衣服を見下ろす。 よく見ると少量ではあるが、上品な光沢を放つスーツから水がポタポタと滴っていた。 花屋は知ってか知らずか、そそくさと割れた花瓶を軽く片付け始めた。 それを見た強面の男が罵声を飛ばす。 「ははっ、ちまちま片付け始めてんじゃねぇよ!おい、どうしてくれんだ!このスーツはイタリア製で50万もするんだぞ!」 花屋は何も言わない。 目も合わせようとしない。 カシャカシャと手先だけが音を発している。 「おい!聞いてんのか!あぁ!」 「これでは、終わりが見えませんね。花屋さん、どうするつもりですか?」 少年は、そう言って白いハンカチをポケットにしまう。 花屋はそっと立ち上がり、俯いたままボソボソと言う。 「分かりました。スーツ代を弁償すればいいのですね?」 そして強面の男を睨む。 男は上から下、下から上と覗くように花屋を見る。 「あったりめぇだろが!ほらよ?早く金出せよ?おぉ?」 強面の男は言う毎に花屋へ近付く。 一歩。 また一歩。 花屋の目と鼻の先に、その強面っつらが近付く。 目は逸さない。 睨を止めた花屋は不意に顔を上げると、少年を見た。 少年は花屋の視線に気付き、首を傾げる。 この光景を客観的に捉えた少年は、クスっと笑い口火を切る。 「当事者はどちらも行動している最中にトラブルが発生した。ならば、当事者のどちらか一方が責任を担うのは考え難いですね。」 「…っあぁ!?」 強面な男が間を置いて発する。 花屋が一瞬ニヤりとした表情をし、瓶底の破片を拾う。 そしてボヤくように呟いた。 「折角、クヴンハーウンから直送して頂いたのに。ジノリの花瓶が可愛いそうだ。」     瓶底には刻印がある。 『ЖRoyal・q・CopenhagenЖ』 「スーツ代は全額払います。勿論、花瓶も責任を取って頂けるのなら。」 と花屋は言った。
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