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………人無き闇夜に呟きが聞こえた………
先見えぬ深い闇の世界から………
「これは人相容れぬ、我ら“ウラ”の物語………。」
何かが暗い陰で囁く。
突如、夜風と共に“闇”が集まり、人の形を成し始めた──────
そのおぼろげなヒトガタは、その顔らしき場所に表現しがたい笑みを浮かべた。
その耳まで裂けた口から、ソイツは低くとも高らかに唄い始める……………
「人の世に忘れられ、
時の流れに消え去れり。
されど我ら深き淵に在りて、
人の闇にぞ潜みけれ。
盛者必衰の理がごとく、
人の世の“ウラ”を成す者なり……………」
最後の言葉が闇夜に消えるようにソイツは消えていった。
黒い影の行方は誰も知らない。
何も知らぬ人間どもは底知れぬ夜に、ただ眠るのみ。
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