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「文化祭…、ね」
黒板にどーんとデカく書かれた“文化祭”の字。
白いチョークで書かれたそれに、教室内はざわめきだした。
どいつも楽しげに顔を綻ばせている。
(……めんどくさ…)
「ゆーや、食う?」
ぼんやりと黒板をバンバン叩きながら熱心に声を張る学級委員を眺めていると、
後ろから聞こえてきた聞き慣れた声。
俺は声の聞こえた方へ振り向いた。
すると、予想通り、苺味のポッキーを見せるようにそれを持った腕を少し上げる、
茶髪の見慣れた顔がひとつ。
俺は、未だに「いる?」と目で訊いてくるそいつの手から、何も言わずにポッキーを摘んだ。
「文化祭かあ…、
めんどくさっ」
俺の心の声を代弁したそいつは、
小中、そして高校までも同じという、正に腐れ縁の幼なじみの高瀬 大輝。
茶髪にピアス、ワイシャツの第四ボタンまで開けた認めたくないが結構なイケメン。
入学式に遅刻して、その上、上記の格好で現れ、
入学式直後に生徒指導室へ連行されるという偉業を成し遂げたバカだ。
誠に、誠に残念だが同じクラスになってしまい、
生徒指導室から、遅めの教室初入室した奴が、俺を指さし、
『何で起こしてくんなかったの!』
何てほざいたので光の速さで蹴りをかましたのは言うまでもなく、
それから暫く、一部の女子の間で俺と奴のホモ疑惑が流れたのも、言うまでもないだろう。
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