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「失礼します。お布団の準備をしに参りました。」
そう言って、宿の主人が部屋に入ってきた。その光景を目の端に捉えたまま、私はじっと空に浮かぶ『君』を見ていた。そんな私を見ていた主人が
「今日はまた一段とキレイですよね。」
そう言って私が返事をする前にふすまを開け、出ていっていた。しばらくして振り返れば、きちんとしかれた布団があった。時刻は少し十時を過ぎていて私は障子を開けたまま布団に入る。
「明日も早い。そろそろ『君』ともさよならだ。また今度も会えるといいね。お月様。」
『君』はまた当然のごとく答えなかった。私はフッと笑い、目を閉じた。
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