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俺は高三になり、部活を引退してからずっと隣町の総合病院に通っている。それは楓が入院しているから。
最近になって一番奥の部屋に移された、楓が言うには同じ部屋の爺さんが夜五月蝿くて寝れないんだと、でも本当の理由は危篤で、俺には言うなって親に言っていたらしい。
楓とは中学一年の時に知り合った、お互いに別の地域から同じタイミングで転校し、席が隣り合った、同じ境遇な事も合って仲が良くなるのに時間はかからなかった。
告白をしたのは中学三年の時だったが、それまでも一緒に帰っていたし、お互いに意識もし合っていたので特に変化は無かった。
楓がいつも隣に居てくれた、楓が居るのが当たり前になってたんだ…
「……と…やと…勇人!」
「え?」
「全くもう、起きてますかー」
やべ、ぼーっとしてた、楓の病室に来てんのに何なってんだ俺は…
「勇人ってさ、昔からかわんないよねー」
元気に振る舞ってもそんな顔色してたら心が痛いんですけど…
「いきなりなんだよ」
「なんか中学校思い出しちゃってさ、久しぶりに行ってみたいじゃん、卒業してからずっと行ってなかったし」
「無茶言うなよ…まあ、体良くなったらな」
良くなったら…ああそうだ、良くなるに決まってるさ
「あー…うん、だね!」
「七不思議とかあったよな、スーパーとかゲーセンとか学校関係無い話まで入っててな」
「ははは!覚えてる覚えてる!」
俺は楓に何をしてやれるんだろ、責めてこの時間だけは楽しく…楓は楽しいかな…
気が付けば外は夕暮れになっていた、面会時間が終わる。
「じゃあな楓、また明日来るよ」
「うん、じゃあ…あ、待って!」
「ん?」
楓はポケットとから赤い髪留めを取り出し、勇人に渡した。
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