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「 だいたいさ、
ここって広すぎない?
王立だから仕方ないかも知れないけど…。
それにしたって、
調べたい事があっても
すぐ探し出せないんじゃ、
意味、ないでしょ 」
沢山の蔵書。
フィリア・ルーは隙間なく陳列された棚を呆れたように眺めている。
(きっと、
初めての利用なんだわ)
各層にはカウンターがあり、
そこで検索システムを起動させれば、
目的の本の場所を調べられる。
( 知らないのね、
この人 )
フィリア・ルーはキョロキョロと辺りを見回しながら、
先の見えない通路を再び歩き出す。
「 ちょっと待って下さい!
その…フィリア・ルーさん、
…私が案内しましょうか? 」
「 ……え? 」
思わずハッシと
彼の長衣(ローブ)を背後から引っ張った。
フィリア・ルーの動きが止まる。
「 あっ、す、すみません…! 」
慌ててパッと手を離す。
しまった…、
もし高位の方だったら、
どうしよう。
王族、貴族または爵位を持つ者には、
平民から触れる事なぞ
許されない。
先王の時代は罰則まで存在した。
テグネール王は、
そういう時代遅れのしきたりを嫌い、
それに関する法を改正した。
だが、
古い家柄の者や先王のやり方を支持する者達は
いまだに平民が触れるのを
良しとしない。
彼は貴族かも知れない。
フィリア・ルーの動きは
それだけ洗練されていた。
ルナはギュッと目を瞑り、
息を呑む。
プッ…。
あれ…?
また、私、
笑われた。
激昂されるかと、
身構えていたのに…。
俯いてるルナからは、
その姿は見えない。
「 ねぇ、普通、
フルネームで呼ばなくない?
俺の事はルーでいいよ。
ルナはここ詳しいの? 」
顔を上げるとルーは
かすかに笑っている。
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