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済んだ事、と言いながらも彼の表情は非常に暗い。ニールに対して言った、と言うよりは自分に言い聞かせていると言う方が近いのだろう。
「……それを言われたらなんも言えねぇよ。ったく、俺が頭下げるなんて珍しいんだぞ?」
冗談交じりにニールはため息を吐く。
「解ってるよ。だからさ」
息苦しさを紛らわせる様にラークもため息を吐く。
「そう思わないと、俺だって辛いんだ。助けてやりたかった子、助けられなくて、もっと優しくしてやれば良かったって、思っちゃうからさ」
ラークは、胸ポケットに入れた仮発行のライセンスに映っているシオンを思い出し、後悔に苦しそうな表情をする。
「どうにかしてやりたかった。色んなところ見せてやりたかった。色んな事させて、一緒に生活したかった。そんな事思ったら、今でも眠れなくなるよ」
声を震わせ、ガルクにすら言っていない事を口にする。その苦しさを誤魔化そうとして、彼なりに相棒に気を使い、その結果が、朝からハイテンションな理由の一つでもあった。
「でも、済んだ事なんだよ。もう終わったんだよ。だから、どうしようも無いんだ」
項垂れ、ギュッと拳を握り、ラークは吐き出す。
前に会った時よりも自分の感情を出せる様になった事は良い事だ、とニールは思うが、報われる事のなかった彼の思いと、その思いを向けられた人物の事を思うと、非常に苦い物を感じた。
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