赤竜

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 木の上に居るラークが戸惑いの表情から、ガルクにしか解らない怯えの表情に変化し、彼は慌てて人々を宥め始める。木の上で過呼吸など起こされても助けようがない。 「落ち着いて下さい! 私達は救助に来たんです!」  ガルクが声を張り上げると、三十人近い人々はその声量に驚いた様で動きを止めて振り向く。  上に居るラークも少し驚いた表情をするが、もはや反射的なので本当の意味で驚いてはいない。むしろ、流石ガルクだな、と思っているくらいだ。 「あの人がヴァランガなんですよね?」  騒ぎはしないが、今だ興奮気味な女性は無遠慮にラークを指差してガルクに尋ねる。 「そうです。彼がヴァランガです。でも、仕事の最中は神経質になるんです。あまり騒がないで下さい」  神経質なのは仕事中だけじゃないのだが、ガルクはとりあえずそう言う。  木の上で膝を抱えるようにしてしゃがんでこちらを見ている彼を見て、観光客達もそれを察したか木から離れた。ガルク的には、そのラークは怯えた子供にしか見えなかったりする。人々は木から離れ、彼を心配そうに見上げる。その視線が恐いのか、彼は一向に木から下りて来ようとしない。  世話のかかるやつだな、相変わらず、とガルクは怯えているラークを見上げて思い、小さくため息をついて話しを逸らす事にした。 「レッドドラゴンに襲われた時の事を教えて下さい。怪我人はいないようですし、出来ればそこら辺も詳しくお聞かせ願います」  石に腰掛けたハンターにそう声をかけると、離れてはいるのだが、ガルクの声ははっきり聞こえたらしく、彼は頷いた。  それを見てガルクは、チラリと後ろのハンター達を見て、歩き出す。ついて来い、という合図だ。
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