赤竜

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 最初はレッドドラゴンは道に座っていただけだった、と男は語った。  十匹のレッドドラゴンが広くない道に黙って座っている光景と言うのはあまりに珍しく、ハンターとしての立場から言えば『恐ろしい』の一言だったのだが、彼らはバスを見ても攻撃の意思を見せず、なにやら相談するように互いを見て目配せをしているようだった。  男はハンターとしてバスの運転手に「すぐにここから離れろ」と進言し、運転手もこれに従ってレッドドラゴンを刺激しないようにUターンを始めた。何度かハンドルを切り替え、反対側を向いて元来た道を引き返そうとした時、一匹のレッドドラゴンがバスを飛び越え、目の前に着地した。思わず止まったバスの入り口を一匹が破壊し、他のレッドドラゴンもバスを囲む様に並んだ。  恐怖におののきはしたが、レッドドラゴンは恐慌状態寸前のバスを前に何もしなかった。悲鳴を上げる人間達を楽しむ様子も無く、何かを待っているようにジッとしているだけで、それに気づいたハンターは、まさか、と思いながら一人バスを降りた。  目の前に来てもレッドドラゴンは何もせず、むしろ道を開けるように後退したため、男は全員にバスから降りるように指示をした。  老人が体を気遣いながらゆっくりとバスを降りる時も、何も解らない子供がレッドドラゴンを見て騒いでも、彼らはジッと黙っていた。  そして、全員がバスを降りて離れたのを確認してから、レッドドラゴン達は空のバスを攻撃した。
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