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観光客とハンター達がぞろぞろと移動していく気配を感じ、同時にレッヅがこちらに向かってくるのを察してラークは足を止めた。
「どうしたんだ?」
先ほどより遥かに穏やかにラークは尋ねる。あまりの変わりようにレッヅは一瞬動きを止めるが、すぐに彼の隣に移動する。
「……どこまで覚えてるか、気になってな」
静かで穏やかな森の中、二人は並んで歩く。
一人はあまりに美しく、一人は殺伐としていて、そのいでたちは異様だ。
「どこまでって、何がだ?」
ラークは自分の背を抜く背丈の草を掻き分け、それでもリラックスした様子で歩く。レッヅは少々草の硬さにてこずりながら、小柄なラークに何とかついて行く。
「キャロレイについて。ラルバート家について」
ボソボソとレッヅは言う。
草を掻き分ける音にまぎれて聞こえにくいが、ラークの耳はしっかりとその声を捕らえ、悩みながら返す。
「殆ど知らない。ラルバートって家名はそんなに特別だったのか?」
その答えにレッヅは、やっぱりな、という意味の沈黙で返す。
背丈の高い草から出ると、少し開けた場所に出た。高く葉の生い茂った木々が日光を遮って草が育ちにくいらしく、枯葉の生い茂った地面はふかふかで、慣れた者でないと足を取られて歩きにくいだろう。
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