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一匹が警戒しつつもラークに近づいて来た。ラークは立ち止まり、恐れる様子も見せず、ドラゴンを見上げる。
爬虫類と同じ、無感情な瞳はジッと小柄な人物を見る。
ヒュゥ。
ラークは口をすぼめ、口笛を吹き損ねた様な音を出す。
ドラゴンはその音を聞いてピクリと反応し、更に近寄り、竜族らしい長い顔を近づけ、まるで犬の様に彼の体の匂いをかぎ始める。ここまで近づかれては、攻撃を察知しても反撃は間に合わない。だが、それでも彼は手を広げ、無警戒に獰猛の代名詞のレッドドラゴンに体の匂いを嗅がせている。
「……ッ!」
やっと追いついたレッヅがその光景に出くわし、一瞬は反射的に背負ったライフルを手に伸ばしたが、攻撃する気配もなく匂いを嗅いでいるだけのレッドドラゴンと、緊張するでもなく手を広げて嗅がせているラークの様子に気づき、様子を窺う事にした。
ヒュゥ。
匂いを嗅いでいたレッドドラゴンは、先ほどラークが出した音とそっくりな音を出し、一匹がどこかに向かって飛んで行った。
それを見送り、ラークは今まで匂いを嗅いでいたドラゴンを見る。よく見ればメスらしく、顎に丸みがある。彼女は彼に体を摺り寄せ、傍らに座って、まるで寄りかかれといわんばかりにジッと彼を見る。
「なんなんだよ、まったく」
そんな行動を取るレッドドラゴンが妙に可愛く思え、ラークはため息混じりに笑って、彼女の腹に寄りかかり、地面に座る。
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