赤竜

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 腹部をくわえられたラークは、それに気づいて口の中で暴れ、体が自由になった瞬間に頭の二本角に掴まり、一瞬で背中に移動したと思うと、そこから飛び上がってレッヅを襲おうと構えていたドラゴンに飛びついた。  いきなりの衝撃に態勢を崩すドラゴンだが、何とか立て直し、背中に飛び乗り首にしがみついて頭に移動しようとしている彼を見て攻撃の意志を弱めた。  ヒュゥ。  ラークは焦った表情で先ほどと同じ音を出す。それで伝わったか、ドラゴンは警戒を緩めた。 「レッヅ、もう大丈夫だぞ!」  レッドドラゴンの背中に跨り、ラークは彼を見下ろす。  その様はまるで九匹のレッドドラゴンを従えているようで、レッヅは複雑な気分になる。  キャロレイとして考えれば、彼がドラゴンにして見せた対応が正しい。キャロレイは今ではもう元が何の生き物だったかわからないが、魔物や動物が人の姿になった存在。人と同じではないが、かなり近い存在ではある。それでも、人間よりは遥かに魔物や動物達に近い。それはつまり、それらの中間に立つことが出来る存在でもあり、心を通わせる事の出来る存在でもある。しかし、キャロレイ達は町を失い、完全な人として生きている。人間の常識に従い、職業をハンターとしているレッヅもブライトも、魔物と心を通わせようなどと思った事はない。
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