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「世話になった?」
レッヅは驚きにオウム返しする。人が犬や猫など、傷ついた生き物を世話するように、知力の高い魔物や、情の深い動物が人を助ける事はある。だが、数ヶ月も世話をするとは考えにくい事だった。
「ああ。重傷で動けなかった俺の怪我を治療してさ。良くしてくれたぞ」
ラークは淡々としている。その抑揚の無い口調に、深く聞いてはいけないのだろうと察したレッヅは黙る。
一匹が頭を撫でろ、とラークに視線で要求し、彼はその大きな頭をごしごしと乱暴に撫でる。
「……懐かれてるな」
家畜化されていないドラゴンが頭を撫でろと言っている光景を初めて見たレッヅは、ボソリと呟く。
「なんだかな」
ペシペシと額を叩いても嫌がる気配のないドラゴンを見ながら、ラークも口調に若干の戸惑いを滲ませる。自分に懐くドラゴンが、バスを襲った事に何か因果関係があるのだろうか? とそんな事が頭をもたげる。
シャオオォォォォ……。と、遠くからドラゴンの声が響いてきた。さきほど飛んで行ったドラゴンの声だろう、と二人は思いながら九匹のドラゴンの様子を窺う。
頭を撫でられていたドラゴンはラークに背中に乗れ、と言わんばかりに背中を見せて地面に伏せたため、彼はそれに従ってひょいと飛び乗る。レッヅは連れて行く気はないらしく、そのまま羽ばたいて宙に浮いた。
「ガルク達に大丈夫だって伝えておいて貰えるか? 特にガルク。あいつにはちゃんと俺は無傷だし、こいつらに害意はないってしっかり伝えてくれな? 怒ると面倒だからさ」
レッヅを見下ろし、ラークはそう伝言を頼む。レッヅは戸惑いながらも頷き、それを確認したようにドラゴン達はラークを背に乗せたまま、空を飛んだ。
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