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ニールは複雑な表情をしている。それがラディに対する思いである物と、自分に対する物が混ざり合った物だと、ラークは知らない。
「知ってたのか?」
まさかニールがあの女を知ってるとは思わず、ラークは首を傾げて尋ねる。気を許した表情は子供じみていて、ニールは表情に苦いものを混ぜる。
「すまねぇな。知ってたけど、俺の立場じゃなんも出来ねぇんだよ。ラディを説得しようと……」
深々と頭を下げて陳謝していたニールだが、チラリと見上げるとラークは全くコチラを見ておらず、どこかをジッと見ていた。
「へぇ? そうだったんだ」
ラークは宙を見たままそう言う。顎に手を当ててしきりに頷くラークに、流石のニールも心配になった。
「誰と話してんだ?」
尋ねるニールにラークは振り向いて首を傾げる。
「……ああ、ニールも見えないのか」
そう呟き、一人で納得した様にしきりに頷く。何も解らないニールとレッドドラゴン達は、挙動不審なラークに戸惑いの視線を向ける。
「あの女がいなくなって、俺少し変わったんだ」
流石にこの戸惑いの視線には居心地が悪かったらしく、誤魔化す様に説明を始める。
「空に魔方陣見えるし、風が話しかけて来たりするんだ」
「……なんだそりゃ? 空に魔方陣?」
言われてニールは空を見上げるが、ラークが見えているその魔方陣は見えない。
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