★独裁者に哀れみを

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「君は死を運んでくれるのかい?」   独裁者はカップにミルクティー二人分を注ぎながらさらに続ける。 「ならば我輩たちは戦争に勝つということだね!! まさか死を運ぶ神様がこんなに可愛らしい方だったなんて。」 きゃっきゃと笑うその笑みに、黒い神は鋭い目線を向けた。 「……」 相手は気付いていないようだった。いや、気付いていないフリをした。     多分この独裁者は未来を分かってているんだと思った。     「わかってるんですよね?独裁者さんは」 正直に答えてくれないだろうが質問をぶつける。 「何をだい?」 独裁者はカップを少年に渡してから疑問詞を浮かべ、笑う。   「…はぁー…、…んっ!?∑」   溜め息を付いてカップを傾けミルクティーを飲む少年の腕は急に掴まれて    かちゃん   と椅子と腕に手錠をはめられる。 「何するんですか?」 あまり動じずに冷たい目で少年は独裁者を見上げた。 「勝利の女神を逃がさぬように、ですよ」 笑いながら少年の椅子から離れ、窓の外の赤い景色を見つめながら言う。   「そんなことしなくなってオレは逃げません」   死を告げる黒神をわざわざ自分から掴んで離さないなんて。 「分かってない…」 オレは貴方を死なせたくないのに。     そう、ぽつんと聞こえないように黒神はつぶやいた。 ポケットの中には小さな花、ヘムロック。   花言葉は『あなたは私を死なせる』                   今となっては 独裁者はすべてを見通していたのかもしれない、と思う。image=83626427.jpg
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