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「君は死を運んでくれるのかい?」
独裁者はカップにミルクティー二人分を注ぎながらさらに続ける。
「ならば我輩たちは戦争に勝つということだね!!
まさか死を運ぶ神様がこんなに可愛らしい方だったなんて。」
きゃっきゃと笑うその笑みに、黒い神は鋭い目線を向けた。
「……」
相手は気付いていないようだった。いや、気付いていないフリをした。
多分この独裁者は未来を分かってているんだと思った。
「わかってるんですよね?独裁者さんは」
正直に答えてくれないだろうが質問をぶつける。
「何をだい?」
独裁者はカップを少年に渡してから疑問詞を浮かべ、笑う。
「…はぁー…、…んっ!?∑」
溜め息を付いてカップを傾けミルクティーを飲む少年の腕は急に掴まれて
かちゃん
と椅子と腕に手錠をはめられる。
「何するんですか?」
あまり動じずに冷たい目で少年は独裁者を見上げた。
「勝利の女神を逃がさぬように、ですよ」
笑いながら少年の椅子から離れ、窓の外の赤い景色を見つめながら言う。
「そんなことしなくなってオレは逃げません」
死を告げる黒神をわざわざ自分から掴んで離さないなんて。
「分かってない…」
オレは貴方を死なせたくないのに。
そう、ぽつんと聞こえないように黒神はつぶやいた。
ポケットの中には小さな花、ヘムロック。
花言葉は『あなたは私を死なせる』
今となっては
独裁者はすべてを見通していたのかもしれない、と思う。
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