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2人は無駄話をしながら店の近くのコインパーキングに着いた。
会長から貰ったシルバーのベンツS600が止まっている。
「龍、前のコンテナについて来い!」とヒロは、携帯で命令した。
アジトは四条大宮交差点から、少し下ったところにあった。
下がガレージになっており、上が事務所になっている。
看板には、錆付いた字で大宮自動車と書かれている。
ガレージの右側半分に高級車の部品が所狭しと積まれている。
「何かお前ら、自動車泥棒か?」
「屯田兵です。平和の時は、バイトしないと食ってゆけません」
「みんな苦しいんやな」
「ヒロさんは直若ですから、上納金凄いでしょう」
「まあな、何とかしのいでるわ」
二台の車をガレージの中に止めた。
全員が車から降りた。
大きなバックを持って降りた龍が「ヒロさん、何の仕事ですか?」
「風神雷神がこいつらに盗まれたんや、夜十時に奪回せんと、ロシアと戦争になるんや」
「えーー、そんな、苦労したのに。誰が盗んだんですか」
「分からんが、こいつが手がかりや」
組員が奥の部屋に死体を運んでいる。
「解剖してくれ」
「いいですが、今度は生かして下さい。自白剤と催眠術を掛けて、何でも聞き出しますから」
「催眠術かけられるんか、行きつけのキャバ嬢に俺に惚れるように術を掛けてくれ」
「機会があれば……」
監視の組員2人を残して、菅野達は奥の部屋に入った。
2人も追従した。
奥の部屋には、ブルーシートが敷かれたテーブルの上に死体が載せられている。もう組員が一枚づつ服を剥している。
ヒロは腕を組んでそれをじっと見ている。
「龍、俺が死んでも解剖だけはさせるなよ」
「ええ、僕も嫌です。まる裸ですからね」
真っ裸にされた男を前にして、菅野がヒロに「どうぞ、解剖して手がかりを見つけてください」
「衛星映像はどうやった」
「イオンからプッツリと途絶えています」
「警察の監視映像は?」
「まだ来ていません」
「そうか、龍頼む、お前が頼りや」
「はい」
龍は、大きなカバンを死体の横に置いて、カバーを開けた。
白衣を着て、真っ白な帽子とマスクをして、薄いゴム手袋をはめた。
「では、合掌します」
龍が手を合わせて同じ運命にならぬ様にと、冥福を祈った。
「南無……。始めます」
龍は髪の毛から順に目、鼻、口と丹念に調らべだした。
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