アジト

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ヒロが菅野に向かって言う。 「いや、それは早計な判断です。やくざ上がりが手下になったと考えた方が筋が通ります」 龍が「水を下さい、胃の内容物を洗います」 「はっ」 佐々木が古びた木製のドアを開け奥に入った。 「次は脳を生かせといて下さい。面白いもの見せてあげますから」 「今から、次々に死体が来る。どれか生きているやろう」 佐々木が戻ってきて水が入っているペットボトルを龍に渡した。 ボールに水を入れ、二度胃の内容物を洗って、白い紙の上にピンセットで一つづつ載せた。 赤い点が多いいようだ。 ヒロが鼻を摘んで顔を近づける。 「これは赤とうがらしや、それに白菜のカケラに、豆モヤシに、ほうれん草。こいつは韓国人や、どや龍」 「日本人と韓国人の混血で生活は韓国風なんでしょう。日本人は朝からビビンバやキムチを食べませんから」 「それに、なんや小さな粒があるで」 ヒロが黒い粒を見つけた。 「ゴマでしょう」 「イヤ違う。だれか味見してくれ」 組員全員が後ずさった。 「根性ないな、佐々木やれ!」 「風邪で味が分かりません」 仕方なしに菅野がピンセットで摘まんで鼻の近くに持ってきた。 クンクンと臭った。 「これは、山椒ですよ」 「山椒?」 「ん……韓国料理屋で朝早く開いてる店と言うと……、これは八条で24時間営業をやっている韓国食堂の物かもしれませんよ。ビビンバと山椒をふんだんに使った料理とチゲが有名です。朝から焼き肉もやってます」 「戦闘中にゆっくりと家庭料理は喰わんからな、持ち帰りか、そこで食べた可能性がある。ひよっとして本拠地かもしれん。龍、お前は敵に顔を覚えられてないはずや、誰かと店に行け」 「僕は……」 「うまい飯を食いに行くだけや」 「部下に女性がいますから、すぐに呼びます」 菅野が携帯電話を取りだした。 「銃はあるんか?」 「仕事ですから、小型を一丁持ってます」 「俺の貸してやる、相手は武装集団やこれやないと、防弾ジャケットは貫通せんのや」 ヒロは、防弾ベストとトカレフを龍に渡した。 「まだ、仕事引き受けてないですが……」 「もう、死体損壊犯や、後にはひけんやろ。すぐ解決すれば明日からパリに行けるんや、お前のとうちゃん、かーちゃんも探してやる」 「はあー」 龍は大きなため息を吐いた。 「ベンツは置いて行け、佐々木、龍にインカムを渡せ」
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