19人が本棚に入れています
本棚に追加
ヒロが菅野に向かって言う。
「いや、それは早計な判断です。やくざ上がりが手下になったと考えた方が筋が通ります」
龍が「水を下さい、胃の内容物を洗います」
「はっ」
佐々木が古びた木製のドアを開け奥に入った。
「次は脳を生かせといて下さい。面白いもの見せてあげますから」
「今から、次々に死体が来る。どれか生きているやろう」
佐々木が戻ってきて水が入っているペットボトルを龍に渡した。
ボールに水を入れ、二度胃の内容物を洗って、白い紙の上にピンセットで一つづつ載せた。
赤い点が多いいようだ。
ヒロが鼻を摘んで顔を近づける。
「これは赤とうがらしや、それに白菜のカケラに、豆モヤシに、ほうれん草。こいつは韓国人や、どや龍」
「日本人と韓国人の混血で生活は韓国風なんでしょう。日本人は朝からビビンバやキムチを食べませんから」
「それに、なんや小さな粒があるで」
ヒロが黒い粒を見つけた。
「ゴマでしょう」
「イヤ違う。だれか味見してくれ」
組員全員が後ずさった。
「根性ないな、佐々木やれ!」
「風邪で味が分かりません」
仕方なしに菅野がピンセットで摘まんで鼻の近くに持ってきた。
クンクンと臭った。
「これは、山椒ですよ」
「山椒?」
「ん……韓国料理屋で朝早く開いてる店と言うと……、これは八条で24時間営業をやっている韓国食堂の物かもしれませんよ。ビビンバと山椒をふんだんに使った料理とチゲが有名です。朝から焼き肉もやってます」
「戦闘中にゆっくりと家庭料理は喰わんからな、持ち帰りか、そこで食べた可能性がある。ひよっとして本拠地かもしれん。龍、お前は敵に顔を覚えられてないはずや、誰かと店に行け」
「僕は……」
「うまい飯を食いに行くだけや」
「部下に女性がいますから、すぐに呼びます」
菅野が携帯電話を取りだした。
「銃はあるんか?」
「仕事ですから、小型を一丁持ってます」
「俺の貸してやる、相手は武装集団やこれやないと、防弾ジャケットは貫通せんのや」
ヒロは、防弾ベストとトカレフを龍に渡した。
「まだ、仕事引き受けてないですが……」
「もう、死体損壊犯や、後にはひけんやろ。すぐ解決すれば明日からパリに行けるんや、お前のとうちゃん、かーちゃんも探してやる」
「はあー」
龍は大きなため息を吐いた。
「ベンツは置いて行け、佐々木、龍にインカムを渡せ」
最初のコメントを投稿しよう!