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ヒロはそれを肌で感じているが、女で何度もの失敗を脳裏に思い出している。
女は危険や、しかし麗子もあんな感じやしなあ、菅野は口が堅そうやし美人や、適当に遊ぶ女にはうってつけや。仕事が一段落がついてやがな……。
≪ヒロさん≫
インカムから龍の緊張した声がする。
「どうした」
≪店の前に来ました。今から入ります。インカムは耳に付けれませんので、一方的に声だけを送信します≫
「了解」
「近くにスーパーがないんか?」
《ホームセンターアヤハがあります》
「菅野、そのホームセンターに俺達が入る。トラックは西大路駅方面に行かせろ」
「命令ですか?」
「そうや!」
菅野がトラックに命令を送っている。
≪エリカちゃん、どうぞ先に……≫
インカムから龍の声がする。店の中に入ったようだ。
《んー、これがメニューね。そうね、ビビンバにキムチに、生ビール》
女子高生のような声がする。
《僕は豆腐チゲに、ナムル、トッポギに生にしょうかな、すみません…………》
「エリカは可愛いんか?」
「KKY48って感じ」
「なんやそれ」
「京都烏丸会やくざギャルって意味」
「アイドル並みか、それで龍がうわついた声をしとるんやな」
「夜は、キャバクラで働いてますから男の扱いはプロです」
「お前は?」
「私は惚れたら何も見えなくなります」
「盲目の恋か、うまい言い方なや。プロ中のプロやな」
「違います。命を掛けて尽くすタイプです」
「じゃあ、朝夜、仏壇を拝んでいるんやな」
「ヒロさん、意地悪」
「死んだら終わりか」
「やくざは生きている事が勝ちなのです」
「そうやな、いい事いうなあ」
「ヒロさん左手、店を通過します」
ヒロは身を乗り出した。
『24時間営業、韓国家庭料理ハン』と派手な看板見えてきた。店の前には四台の車が止まっている。ガラス窓際に龍の顔がチラッと見えた。
「昼前のに満員やな」
「人気店ですから」
ベンツは店の前を通り過ぎた。
「どうやって、調べるんや」
「たぶん向こうはこっちの動きを感づいていると思います。何らかの動きがあると思います」
「なければ」
「二人で焼き肉でも食べに行きましょう」
「そやな、朝からなんも喰ってない。銃とベストの予備はないんか?」
「トラックの中にあります」
「全員で乗り込むか、必ず動くな、待ち伏せされたらどうするんや」
「ボンバーエリカが仕込んでいるはずです」
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