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ヒロは気を取り直して、麗子の朝食を作り出した。ヒロにとってハムエッグとサラダは、秒速でできるメニューだ。パンを、オーブンレンジに入れ、トイレの洗面所で、朝の身支度を始めた。
「しかし、烏丸会に盗みに入るとは、命知らずの奴やな」
顔を洗い、歯を磨き、ついでに髪の毛まで洗いだした。
チン!
パンが焼けたようだ。
タオルで髪の毛を拭きながら、パンを取り出しバターをたっぷりとぬって、チューブ式のイチゴジャムでハートマークを書いた。「よし!」朝食をテーブルの上に置いた。
「ちょっと、時間があるな」
烏丸会の事務所は、四条烏丸の商業ビルの中にあり、バー烏丸から自転車で10分の距離になる。
ヒロは、缶コーヒーを朝食に添え、メモを置いて、烏丸会に事情を訊くため自転車にまたがった。
ヒロは東山方面に向かって自転車をこぐ、烏丸通りに出て、ワンブロック上り、貿易会社が入っているビル前に自転車を止めた。
制服を着た警備員2名が、ビルの中に立っている。
「おい!」
ヒロを止める。
「なんや、俺は会長に頼まれてきたんや、お前ら俺の事しらんのやな」
「知らん、名前は?」
「バー烏丸のヒロや」
もう一人が無線を取り出し、事務所に連絡しているようだ。
「はい……はい……」
もう一人の警備員が「どうぞ……」と頭を下げた。
ヒロは、一階に止まっているエレベータに飛び乗った。
八階のボタンを押した。
「このビルは会長のビルかな……」
ピンポン
エレベータが八階についた。
エレベータ前には大柄の強面の組員が待ちかまえていた。
「お疲れです」
スキンヘッドと五分刈が頭を下げた。
「こちらです」
通路にはまだ硝煙のにおいがする。
通路には警備の組員が並んでいる。
ヒロは烏丸会に九人しかいない、直若だ。
ヒロが通るに連れて厳つい組員が頭を下げる。
フロアの全てが烏丸会の本部になっている事務所の正面のドアが開け放しで、組員が慌ただしく出入りしている。
ちょうど四方(しかた)頭が事務所から出てきた。
「頭!」
「おじき、おはよう御座います」
頭が頭を下げる。
ヒロは、頭の組長と兄弟分だ、必然的におじにあたるのだ。
「おじきはよして下さい」
「言わないと、あっしの指が飛びます。どうぞこちらへ」
事務所の中はなおいっそう硝煙の臭いが鼻をつく。
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