プロローグ

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トラックは駐車場への坂を上っているのか、車体が斜めに傾いた。 菅野が、外の様子を液晶画面に映し出した。 昼前で駐車車両は少ない。 ヒロの頭の中は不思議が渦巻いている。なんでや、なんでや、おかしい、つじつまがあわん。 首謀者の本当の狙いは? キーーー トラックが停車した。 液晶画面に黒いアルファードが止まっている。全面に遮光フィルムが貼られて中がさっぱり見えない。 「鈴木、様子を見て来い」 菅野が組員に命令する。 コンテナの奥から、組員が「失礼します」とヒロの前を掻き分け、ドアを開けて外に出た。 液晶画面に鈴木が入って来た。周囲を監視しながら、ゆっくりと車に近づいている、腰から特殊警棒を取り出した。 ダダダダ……ダダダ…… 両サイドから、銃撃を受ける。鈴木の体中に穴が、バババ…と空き、コンクリートの床に倒れて、死に向かって痙攣している。 ダダダダ……ダダダダ…… コンテナ車も攻撃を受ける。 「佐々木、行くぞ!」 菅野がトカレフを抜いた。 「まさか、殺される!」 ヒロが大声を上げる。 「この車は防弾です。ここにいて下さい」 佐々木と菅野はドンとドアを開け、車から飛び降りて車体の陰に隠れた。 ヒロがドアを急いで閉めた。 「あいつら、マシンガンに勝てるんか」 ヒロは、液晶画面を見ているが、敵の姿が見えない。両サイドの車の陰に隠れているようだ。 防弾ベストを装着して、トカレフを握った。 佐々木が、発炎筒を前方に投げた。駐車場は、しだいに煙で何も見えなくなった。 2人の影が目が見えているかのように動いているのが薄っすらと画面に見える。 ダダダ……ダダダ…… 敵は、無差別に銃撃している。 駐車場は煙幕で充満した。何も見えなくなった。 ダダダダ……ダダダ…… サブマシンガンの爆音と閃光が見えるだけだ。 ダン、ダン、ダン…… 単発の音が数発して、何も音がしなくなった。 ダン! 煙幕がスーと引いて行く。 佐々木が鈴木を背負っている。菅野が、完全武装の兵士を引きずってトラックに来る。 「全員、手を貸して!」 菅野が命令する。 ヒロがトカレフを構えて、外に出た。 佐々木が、鈴木の死体を助手席に乗せている。菅野が兵士を引きずって来ているが、目を見開いてもう死んでいるようだ。 「死体をどうするんや」 「徹底的に調べる」
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