プロローグ

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「リコちゃーんっ、聞いて聞いて!」 バタバタと廊下を駆ける音がしたかと思うと、音の主は『リコ』と呼ばれた女の子の方へと近付いてゆく。 「はいはい。聞いてるから、ニナはもうちょい声のボリューム落としな」 「そして息を整えなさい」という指摘に、全速力で走ってきた女の子は深呼吸を繰り返す。 「リコちゃんリコちゃん、わたしっ、好きな人出来たよ!」 (…――またか) 頬を赤らめながら話す、友人に。『リコ』は、内心そんな事を思った。 「……どんな人?」 もちろん。そんなこと、噫にもださないが。 「えーとね、駅でね、見かけたんだけど…多分、サラリーマン!」 友人は今日もばっちり化粧をして、髪はふんわりと巻いていて、相変わらず…可愛い。 『リコ』は、「そっかあ」といつも通り相槌を打った。  
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