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「プリン美味しいー」
しかも、見れば先程のプリンとは違っている。
それに呆れて、東別は何度目かのため息を吐き出した。
すると狂咲が東別に申し出た。
「俺がこいつ見とくから行っていいぜ」
「悪いな…そいつ馬鹿だから大変だろうけど」
緋色は翠華の酷い言いわれように、然り気無く苦笑した。
「緋色っ湿布届けに行くから待ってろよ」
緋色は片手を上げ、もうすでに歩きはじめている背中を追いかけた。
そして食堂を出た当たりで、東別に話しかけた。
「ギャラリーもといAクラスの皆さんって、そんなに気荒いの?」
東別や翠華たちの話しによれば、よっぽどの性格の悪さだ。
もう人として尊敬に値するほどに。
「荒いってか何回も言ってっけど、プライドが無駄に高いんだよ。自分たちより弱いのに、上に立つのが許せないんだよ」
「なんだそれ」
緋色は盛大に顔を顰めた。
東別の言った許せない奴が、まさしく自分だったからだ。
「理解できなくていいんだよ」
東別は教室のドアを開け、先に緋色を通した。
教室にはまだ誰もいない。
そこで、緋色はずっと考えていたことを東別に伝えた。
「朝の薔薇のことだけど」
「あ?」
「この痣あれの所為だと思う」
緋色は、まるで今晩のお菜(オカズ)を言う母親のように、あっけらかんと言った。
東別はそれには気を止めず、考えるように一点をじっと見つめた。
「あの薔薇さぁ指から離れたときに、口から薄紫の液みたいの糸引いてたんだよね」
しばらくたっても何も言わない東別に、緋色は説明を加えた。
「それって」
「たぶん毒」
「!なんでもっと早く言わねぇんだよ!!」
東別は怒鳴り声を上げる。
誰もいない教室にそれは良く響いた。
「あの場で言うのはちょっとね。真冬ちゃん……心配してくれるのは嬉しいけど、手出さないでね」
「なに言っ――」
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