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「あぁ?知り合ったのは今だ」
「そういや名前もしらないよな」
「プリン美味しいなぁ」
何やら怪しい発言。
一人だけ質問と無関係のことを言った奴を緋色は一瞥し、東別と狂咲のほうに視線を向けた。
「のわりにはずいぶん仲良しだね」
嘘ついているのが簡単にばれてしまうほどに、三人の言動は解りやすい。
それで無くとも、緋色の勘は並大抵ではないのだ。
そんなこと会ったばかりで知らない彼らは、完璧な笑顔を見せた。
「きっと気が合うんだろ」
「ふ~ん」
狂咲の切り返しの言葉に、緋色は怪しく微笑んだ。
「まぁいいや。別にちょっと気になっただけだし……」
緋色は備え付けのブロッコリーをフォークに刺し、くるくると回した。
その行動はどこか不気味さがある。
「君らが知り合いだってこと隠す理由なんて、べつに知らなくても死ぬわけじゃないしね」
東別と狂咲は、緋色の笑顔に唾を飲み込んだ。
額にはかすかだが、皮汗が浮かんでいる。
「緋色!このプリンめっちゃお美味いよ」
緋色は、空気をぶち壊した翠華にイラっとした。
「だまってろ」
「だから危ないってばっ!!」
緋色はブロッコリーを口に放り込むと、たった今まで翠華の右手が置かれた場所に、フォークを垂直に突き刺さった。
そんなやり取りを見た狂咲と東別が安心したように、そっと溜息をついていた。
「緋色、早く食え」
「えぇー」
「……早く食わねぇとギャラリーが来るぞ」
東別の言葉に緋色は不満げな声を上げたが、その後に続いた脅しに素早くステーキを口に放り込んだ。
「食べ終わりました!!」
緋色はステーキを水で流し込むと、真面目な顔で勢い良く立ち上がった。
「じゃぁ行くぞ。おい」
東別はそんな緋色を一瞥したあと、未だプリンに食らいつく翠華に声をかけた。
緋色と東別のやり取りを見ていなかったのか、翠華からは早く食べ終えようという意識が感じられない。
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