第3章(上)

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 茶色で艶やかな革で作られた、このフォルムは見覚えがある。 「これって……」  私は目をぱちくりさせながらギンさんの顔を見た。彼は、欲しくて堪らなかったものを買う少年のような笑顔をする。 「これ、く~だサイ」  店員もびっくりするような幼くて大きな声で言った。  ……というか、眼鏡でスカーフを頭に巻いてる怪しい女を抱えて店に来られたら、誰だってビビるよね。私、超恥ずかしいのですけど。人に見られてるって意識したら余計に羞恥心が高まる……。  私は1人で顔を赤らめ、肩を竦めた。 「それじゃ、6000Lね」  思った以上に普通な対応の店員さん。まぁ商売だもんね。  6000L(レット)ってお金の単位か。高いのか安いのかわからないや。
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