第3章(上)

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「エナちゃんエナちゃん」  ギンさんが私に呼び掛ける。 「オレの袖の内側にポッケがあるんだけど、そこに金入ってんだ。悪いんだけど取ってもらえる??」 「えっ!? 私降りるから」  私は足を伸ばすと、ギンさんの腕に力が入る。 「取って」  ……有無を言わせない、降ろす気もないって……意外と腹黒いのか、それとも我が儘なだけなのか。  今まで裸足だったんだし、別に地べた歩いたって気にしないんだけどな……。  けどこのままじゃ、ずっと降ろしてくれなさそうだ。  人のお金に手を伸ばすのは気が引けるけど……しかもそれ以上に服の中に手を入れるってどうよ……。 「取れる?」  はいはい、わかったよ。今取るからッ!  私は少し眉間に皺を寄せ、ギンさんの服の袖口に手を入れた。  これかな? ポケットらしきものを見つけ、中に入っていた紙を出した。 「悪いんだけど店の人に渡して」  私は店員さんにお札らしきものを渡した。  店の方はニコッと眩しいほどの営業スマイルで受け取る。 「は~い、丁度頂きました~」  ペこりと会釈をし、店員さんはブーツを台から降ろして私とギンさんの足下に置いた。
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