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「エナちゃ~ん、待って~」
そそくさと立ち去る私を呼び止める声が後ろから聞こえた。
あ、そうだった。
「酷いよ、先行くなんてさ」
声の聞こえた方へ顔を向けると、プクッと膨らんだ頬っぺたのギンさんがいた。
忘れてた……というか、恥ずかしさでその場をさっさと立ち去りたかったから忘れてた。
結局忘れてたって事か。
「さて、エナちゃんは何処行きたい? 今日はオレが奢っちゃうよ~」
「う~ん」
……って、あれ? 待てよ。何故デートっぽい事をするって話になってるんだ?
「ギンさん、ブーツありがとうございました。けど案内は街までって言ったと思うんですけど……」
私は眼鏡をクイッと上げ、言い辛そうにギンさんに告げた。
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