第3章(上)

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「エナちゃ~ん、待って~」  そそくさと立ち去る私を呼び止める声が後ろから聞こえた。  あ、そうだった。 「酷いよ、先行くなんてさ」  声の聞こえた方へ顔を向けると、プクッと膨らんだ頬っぺたのギンさんがいた。  忘れてた……というか、恥ずかしさでその場をさっさと立ち去りたかったから忘れてた。  結局忘れてたって事か。   「さて、エナちゃんは何処行きたい? 今日はオレが奢っちゃうよ~」 「う~ん」  ……って、あれ? 待てよ。何故デートっぽい事をするって話になってるんだ? 「ギンさん、ブーツありがとうございました。けど案内は街までって言ったと思うんですけど……」  私は眼鏡をクイッと上げ、言い辛そうにギンさんに告げた。
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