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無我夢中で走る私は、廃墟になりつつある街の片隅に隠れた。
既に何匹ものトロールがこの街に入って来ているらしい。
あんな巨人が何匹も居るんだと考えると怖くて気持ち悪いけど、そのトロールのお陰で殺されずに済んだのも事実……。感謝した方がいいのかな……。
取り敢えず、今の内に家に帰ろう……。
ん……家?
……私の家ドコ?
……そもそもココはドコ?
私の中で空虚感が漂うと、ゾッとした。
ど、どうしよう……。
良く見てみれば、ビルや電柱などの建物が見当たらない。道路もなければ信号もない。都会でもなければ田舎でもない。そもそも日本でこんなところがあるだなんて聞いた事がない。全く知らないところ。
辺りをキョロキョロと見渡した時、ある一ヶ所が目に映る。あった……大きな建物。
しかし、ある事に気付く。
「何であそこの城みたいな大きい家は無傷なんだろ」
私はボソッと口に出した。
この辺の家は、破壊されていたり何らかの被害があるのに何であそこだけ?
そもそも城って……外国?
幾つもの疑問が頭の中に浮かび、無傷の城らしき建物の近くまで行ってみようと立ち上がった。
その時、私の前に誰かが立ち塞がる。
「お前……」
片方の目をバンダナらしき布で隠してる、1つに結った紺色の髪をなびかせた長身の男性。
腰には剣を携えてる。
そして遠くからでも目立つ真っ赤なマント……。
言葉が出なかった。何故なら彼は絶対に味方ではないからだ。
この深紅のマント、見間違う筈がない……。
さっき処刑台の下にいた兵士の内の1人だ。
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